ドングリは有毒か?

ドングリとは
 学術的に言うとコナラ属(クヌギ、カシワ、ナラ類、カシ類)、クリ属、シイ属、ブナ属、etc. 
等の木に生る種子を総称してどんぐりと呼びます。
 世界の温帯から亜熱帯に分布し、森林を形成する重要な木です。果実は野生動物の重要な飼になり
ます。日本には約20種類位のどんぐりがなる木があるそうです。
 ドングリはそれぞれに木によって独特の形・色・大きさ・模様などがあり、これで種類を見分ける
ことが出来ます。

タンニン
 ドングリ中の成分で中毒を起こすとすれば、タンニンです。タンニンとはどういう物質でしょうか?
ちょっとインターネットで調べただけで、奥が深く読んでいると頭がくらくらしてきます。それで専
門家に言わせれば「何と大雑把な!」と言われそうな位簡単に書いてみます。
 タンニとは、植物が食害動物から身を守るために葉、茎(樹皮)、果実に作り出した渋み(渋柿の渋
さが好例)がある物質で、タンパク質、アルカロイド、金属イオンと結合して、難溶性の物質を作る
物質の総称である。多くの植物が大なり小なり持っている。
 我々に身近な植物で言えば、ヌルデなどの虫こぶ(皮のなめしや薬に使われるタンニン酸)、紅茶
やウーロン茶、柿、栗、シソ(タンニン&タンニン酸)などがある。
 植物は巧妙です。種子が未熟で食べられては困る時はタンニンを作って食害を防ぎ、動物に種子を
運んでもらいたい時はタンニンをなくしたり、不溶性にして動物に食べてもらい遠くに種子を運んで
もらいます。渋柿が種子が十分に育つと果肉が甘くなり動物に食べてもらい、糞と共に遠くに運んで
もらうのは典型的な例です。

タンニンの生理作用
 タンニンは摂取すると局所のタンパク質と結合して被膜を作り、粘液の分泌を抑えるため(収斂作
用という)、消炎・止瀉作用があり、タンニンを含む植物は薬(タンニン酸製剤)として使用される
ものがある。従って、タンニンを多量に摂取すると収斂作用の結果、便秘を起こす。

ドングリ中のタンニンの量
 「ドングリの利用技術と澱粉の特性」に次のようなデータがあります。※4(転載承認済み)(単位:%)
種 類水分タンパク質脂 質炭水化物灰 分タンニン
コナラ属アラカシ39.12.81.754.81.63.2
シラカシ34.81.92.559.21.63.8
アカカシ32.92.62.061.01.53.4
ウラジロガシ33.52.53.159.71.23.1
ウバメガシ47.53.11.446.61.41.7
コナラ39.63.91.753.01.83.5
ミズナラ39.43.21.354.71.45.1
カシワ47.33.41.746.11.54.0
アベマキ37.23.62.954.71.63.8
クヌギ37.43.82.754.81.33.4
マテバシイ属シリブカガシ32.43.40.962.31.01.0
マテバシイ33.92.60.861.61.10.4
シイ属スダジイ28.73.70.366.31.00.0
この表を見ると樹種によってかなりタンニンの含有量が異なることが分かります。スダジイはタンニ ンはなく、ごく身近のドングリであるコナラは最も含有量が多く、ミズナラ、クヌギも多くのタンニン を含むことが分かります。中毒を起こすとすれば、コナラ、ミズナラ、クヌギは要注意のドングリと言 えます。 ドングリについての記述  さて、表題の「ドングリは有毒か?」ですが、ドングリを巡る著述に目を通してみましょう。  まず、アメリカのミニブタの飼育書(※1)には次の文章が載っています。 「Should you have Oak Trees in your yard ,be aware that your pig cannot be allowed to eat the acorns on continuously .If a pig ingests too many acorns,over a piriod of time,the pig can exhibit a toxic reaction.」  「要約すれば、ドングリを沢山食べ続けると中毒する可能性がある。」と言うことでしょう。  ところが、一方で、豚のもろもろについて書いた本(※2)では、要点をまとめると 「氷河時代が終わってヨーロッパや西アジアに森林が出現し、広葉樹の広がりと共にイノシシが登場 する。ヨーロッパ大陸は森林に覆われ、イノシシ(ブタ)に適した地域になった。新石器時代にはスイ スで発見されたブタは家畜化による小型化の傾向と足が高く、頭は小さく、涙骨は正方形に近い。こ うしてヨーロッパでは新石器時代にブタの家畜化が行われたと思われる。  イノシシ(ブタ)は、食物として各種のドングリ等の木の実を食料とした。家畜化し、森に放たれ たブタは当然のこととしてドングリなどを餌にした。  広葉樹林での現在行われているドングリによる飼育が“イベリコブタ”である。スペインでもポル トガルでも、イベリコブタの独特の食感、香気に満ちた秘密は“それはドングリだ!”と教えられた。」 美味なイベリコブタの秘密は、ドングリを食べさせていることである。ここからは“ドングリ 有毒説”は出てこない。」   また、NAPPA(The North American Potbellied Pig Association)の「 List of Toxic Plants」 にもドングリは含まれていません。  しかし、今読んでいる本(※3)には次の文章があります。 「ふだんは安全である植物が突然、あるいは予想外に危険になった場合には、野生動物が中毒を避け られないことがある。東アフリカの森林にすむ大型のアンティロープ、ボンゴはツタの一種でときお り中毒を起こす。この植物は7年ごとに開花するが、そのとき有毒になるのである。  ヨーロッパのドングリでも同じような周期的な中毒がおこる。ドングリはタンニンがふくまれてい るが、炭水化物も豊富なので、ウマはこれをむさぼり食う。ドングリをつけるナラの側にも対抗戦略 がある。この樹木は数年おきにドングリを大量生産して、ドングリ食者の市場を満たし、多量のドン グリが残って芽を出させるようにする。この成り年には、イギリス、ニューフォレストの野生化した ポニーがドングリを食べすぎ、タンニンの過剰摂取で多数の個体が死亡する。(ふつうの年にはこの ような死亡は起こらない)。ナラの木は定期的に多量のドングリを成らせて子孫を残すと共に、食害生 物の間引きを行っていることになる。」 「ミニブタ何でもコーナー」で見られる実体験(ドングリに関する部分だけを抜粋しました) ○りぼん。パパさん  どんぐりは完熟の度合いで、有毒物質の含有量に差があること。ペットミニブタの場合、身近にペレ ットがありながら、自己の選択で、どんぐりを食べていること。食べている様子を見ていて、違和感が ないことなどから、大人のブタで、初めてどんぐりを口にする訳ではなく、きちんと、朝、夕、ペレッ トを食べていて、昼あるいは午後に、自由にどんぐりを食べるのは、致死量に至るほどの毒物摂取は、 無いと考えています。あくまで、経験論ですが。  実際、下痢をするほど、食べさせたこともなく(2時間以上食べないと、大人ブタは下痢にならない) また、下痢止めに、薬草を同時に食べたりしてますので、どんぐりを人工的に上げるのでなく、自然の 森で食べさせていれば、適当に下痢止めの草も食べたりと考えているようです。また、子豚と大人ブタ では、体重差で、致死量総量が、まったく違います。ですから、子豚には、どんぐり、トマト、りんご など、果物の種類など、注意すべきでしょうが、50kgを超えたブタでは、りんごの種も、便にしっ かり排泄されてますので、僕は問題を感じていません。ただ、子豚のうちは、危ないものは避けた方が 無難でしょうね。生理的機能が、未発達なので。。  お散歩会で公園でどんぐりを食べてるけど、特に、病気になったり、下痢したりと言う話は、今のと ころ聞きません。途中で、草を食べたりと、ブタさんなりに考えて食べてるから、大丈夫だと思います。 どんぐりも見ていると、ブタさんなりに選んで食べてるので、拾ってきて与えるのでなく、自然に落ち ているのは、ブタが大丈夫などんぐりだけ、選んで食べてる気がしますけど。。 うちの、りぼん。も種とか体に悪いものは、うOちの中に、混ざってますから。。ただ、チビ豚の間は、 食道も腸も細いので、排泄不良で、病気になる可能性があるのでしょうが。50kgを超えれば、大抵 のものは、食べちゃいます。嫌なものは、食べませんしね。毒があると言っても、体重比での量次第で しょうね。獣医さんで、戴く薬だって、毒の1種なんだし。。(化膿止め抗菌剤とかね)  りぼん。は、庄内緑地へ行って、どんぐりを食べた後、おおばこなどを食べ続けていたのですね。 (調子悪くて、おおばこを食べていたらしい?消炎、利尿、止瀉作用などがあるらしい。)  どんぐりを食べたあと、しゃっくりのように咳き込むことがあって、おおばこを食べたら治ってまし た。(別に、飼い主が、教えた訳では、ありませんが。。)  豚さんも、いつもと、違う草の前で、動かなくなる。いつも、見向きもしないのに???ってことが、 あるのは、こういうことなんですね。  豚さんも、おとな豚になると、対処的食餌療法を会得しているかも知れませんねえ。。 ○ファーリンさん どんぐりは有毒って、レポートを読んだのにそれを忘れてあげてました。海外には「イベリコ豚」なる どんぐりをたくさん食べて育ったおいしい豚肉がありますから、どんぐりあげても大丈夫♪と思ってし まいました。  公園に連れて行くと、どんぐりをたくさん食べるけど、途中小休止みたいに草を食べ、またどんぐり を食べます。どんぐりのある公園に行くと2時間位います。翌日のうん●はどっさり&ドングリの噛み 砕いた破片がたっぷり混ざってます。 今のところ、下痢をしたことはありません。 ○デムーロさん 東海地区で隔週でお散歩会を企画しているデムーロです。18日もどんぐり祭りと称してお散歩会を企 画しておりますがKOBAちゃんのレポートも十分理解したうえで運営したいと考えてます。  ちなみに我が家のTONはとりあえず大丈夫みたいです。延々食べてますが特に調子がおかしくなった というのは無いです。 ○ブゥトンさん どんぐりは有害? 私は豚に有害な種類もあると思っています。実はこんな出来事がありました。  歩に行きブゥ達が「ドングリ祭り」をした日のことです。(ブゥ達9ヶ月の頃)ドングリを食べて4時 間後シャワーで2トンを洗っていました。 「ぶぅたん」は、やけにおとなしく歯軋りを繰り返し、「とんちゃん」は、機嫌が悪くぶぅたんに頭パン チをします。そのうちに「とんちゃん」が風呂場で吐き、 あわてて体を拭いてドライヤーで乾かしまし た。そうこうしているうちに今度は「ぶぅたん」が脱衣所で吐いた。半端な量じゃない、3〜4回吐いて (両手に山盛り4〜5杯位)みるみるうちに鼻と足が冷たくなり紫がかって、すごく辛そうでゲッソリし てしまいました(命の危険を感じる程でした)。あわてて獣医さんに電話、 10〜15分で来てくれまし た。  豚の平熱は39度前後、ぶぅたんの熱は36度 、とんちゃん の熱は37度 「低いな〜」と獣医さん。 豚は熱が低いと吐く事がよくあるそうで、2トンともに熱を上げる注射をしてもらいました。豚は熱が高 くなるより、低くなった時のほうが怖いそうです。  翌日には熱も平熱になりましたが結局3日間往診してくださいました。  この時は風邪かな・・と思いましたが 「ドングリ祭り」をした日に大量に吐くということが3回くらいありました。(1歳前後)それ以外には吐 く事はなかったのですが・・(車酔い以外は)  ブゥ達はドングリが大好きでしたが暫くは食べさせませんでした。先週くらいから、今度は違う種類の どんぐりを食べていますが具合が悪くなる事はありません。年齢・どんぐりの種類があるのかもしれませ ん。 ○リラ  本によってはドングリが有害だと書いてあるので、我々もとても心配していました。何しろ、ウチの子 は1ヶ月ほど集中して朝から晩まで食べていましたので。で、色々調べたら、ファーリンさんがおっしゃ る通り、南米(だったと思う)では樫の木がある山間などにブタを放牧させておく習慣があることを読み、 また土を掘り返してドングリを探すことそのものが楽しみの様子だったので、ブタ自身の野生本能を信じ、 好きなようにさせてました。  この一ヶ月程は、ピーナッツバターのような黄土色でネッチャリした感じのウンチをずっとしてました が(おっしゃるとおり、ドングリ入りです)、ドングリのシーズンが終わった瞬間、今週からは元通りの 硬めのウンチに戻ってました。  お腹の調子が悪いときは、自分で勝手にアザミの葉っぱを見つけて食べ、そうするとウンチが正常に近 い状態になってましたし、キノコ類はいくら生えていても何故か食べません。ある程度大きくなると、ブ ー自身が本能で判断するのではないかと思っています。  ちなみに、犬、馬にはドングリは厳禁だそうです。 結論:  ドングリ中のタンニンには中毒の可能性があるらしい。しかし、中毒に至る量はかなり多いと思 われる。よって、多くのブタにとってドングリは継続的に過度に食べさせなければ中毒は起きない ようです。しかし、どの位食べさせられるのかと言う実験結果は見当たりませんでした(多分、そ のような実験をする人はいないのでしょう)。  大体ドングリの種類によってタンニンの量は違いますし、食べるブタの反応に個体差があるので、 ブタにドングリを食べさせる時は、いきなり大量に食べさせないで少し食べさせて様子を見た方が 良いようです。  特に、子ブタは体重が小さいので、体重比から見ると大きくなりがちであるし、タンニン等に対 する対応力がまだ高くなく、中毒を起こしやすいと思われるので注意が必要です。  経験的にブタはドングリを食べた時、草などを食べて無毒化する術を持っている可能性が指摘さ れています。この辺のことは※3の本にも詳しく書かれています。 補足:  ドングリを食べさせる時に注意したいことがあります。それはカビによる毒素の問題です。カビはその 活動において種々の物質を作ります。ペニシリンのような抗生物質は我々に多大な恩恵を与えました。し かし、動物にとって有害なものも多くあります。  ブタが食べて中毒を起こすカビを生じる飼料は、トウモロコシ、麦、(ピーナッツ、ピスタチオ)などで す。ドングリに繁殖するカビが中毒を起こしたというデータは入手していません。しかし、それが注意が 必要ないということにはならないと思います。  カビ中毒が怖いところは、腹痛、下痢、嘔吐などの急性中毒は勿論ですが、慢性中毒です。仮に中毒を 起こすカビが繁殖したドングリを食べたとすれば、その結果は後々になって肝臓障害や肝臓癌になって現 れるでしょう。家畜豚の場合、急性中毒はともかく慢性中毒(肝臓癌など)は彼らの短い一生では問題とな らないでしょう。我々のペットブタは15年前後生きると言われていますから、家畜豚では全く問題視さ れないことに対しても、特別の配慮が必要ではないでしょうか。  ドングリを採集したら良く乾燥させた後に、ビニル袋などに入れ乾燥した涼しいところで保管するのが 良いのではないかと思います。 ※1「The Complete Guide for the Care and Training of Pet Potbellied Pigs」Kathleen Myers著 ※2「トン考ーひととブタをめぐる愛憎の文化史」とんじ+けんじ共著、株式会社アートダイジェス    ト刊 ※3「動物たちの自然健康法ー野生の知恵に学ぶ」シンディ・エンジェル著、羽田節子訳、紀伊国屋    書店 ※4 鳥取県産業技術センター、食品開発研究所、食品技術科、松本通道夫氏の研究 参考にしたホームページ ○帝京大学薬学部「身近な野生植物のページ」 ○喫茶メーリングスト「タンニンとは」